さて温泉。
1997年4月、春未だき、転任を直前にひかえ、旭川からあわただしく夕刻ここのホテルに到着、送別の宴があった。
直前から降り始めた雪は朝まで降り続き、しこたまいただいた酔いのなかで浸かった野天風呂の光景が記憶に焼きついている。
湯上がりにのぞいた縄暖簾の中に旭川出身の細身のおかみがいて、「ずっと地元にいるけど、雪解けの白樺に芽が吹くころが一番好き。」と。この言葉が絶品で、なまなましく記憶に残っている。
ところが、残念ながら「白金温泉ホテル」の外来入浴は3時にて終了。昔の上客も今じゃただの人。しかたがないから向いの「観光ホテル」で、待ちに待った温泉にやっとドボーン。頭がじーんとするほどのここちよさ。ドライブの疲れがどっと出てきた。このままここにゆっくり泊りたい気分。

ホテルのロビーで、「美瑛中学第3回卒業生同窓会」の受付が始まっていた。
齢60歳を過ぎ、それぞれが60年の人生を持ちよっての酒席はさぞかし盛り上がったことだろう。そう言えば「北の国から」の黒板五郎もこの年代だろうか?
この土地で暮らしてきた過去の苦労を知らない私は、この人たちは良いところに住んで幸せと単純に思ってしまう。毎日すばらしい光景と隣り合って、しかも温泉つきなのだからと。
しかし寒さと飢えで離農して去った家族も数え切れないほどいた。極寒の土地で生きていくことはそんなに簡単なことではない・・・まちがいなく。
帰り道、午後4時の太陽はもう暮れようとしている。
あとは札幌に帰るだけ。西の山際に沈む夕日が鮮やかなオレンジの光彩を放つ。反対側は十勝の山々が沈み行く太陽に照らされ、白く輝き、ことばにならない幻想的な光景を現出した。
さようなら、十勝の山々よ。

ここから旭川インターを抜けて160キロの道のりをひたすら走り、札幌に着いたのが6時半。この日の全走行距離は420キロ。さすがに疲れた。
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