翌朝は6時半に起床。ゆっくりと朝食。ホテルは北17条・北大前のホテル「メッツ」。部屋は広いし洗濯機や冷蔵庫、電子レンジなど設備も充実しており、しかも地下鉄駅から徒歩1分と交通も至便。札幌の宿泊は南口と思いこんでいたのだが、認識を改める必要がありそうだ。ビジネスならばこれで十分。
9時前に北口のニッサンレンタカーでブルーバードを調達、時間を惜しんで道内ドライブに出かけた。
この日は正直いってドライブコースの選択に迷った。今の季節の北海道は一番の閑散期で、どの観光地も冬支度で店を閉めているところが多い。五郎さんは洞爺湖方面を勧めてくれたが、弥次さんは「今なら当然、雪山を見てきなさいよ。」と自信を持って言い切り、これで決まった。
道央自動車道を三笠で降りる。
両側の山は遅い紅葉が輝いている。直線道路の三笠市街を抜けるが、左右に並ぶ中学校や市庁舎の建物が目を引いた。モダンなデザインでしかもカラフル、敷地もゆったりとしていて、住民の生活の豊かさを感じる。道内では、他の町で感じることも多いのだが、町作りのコンセプトが一貫している。観光立国北海道ならではの戦略か。

無形の価値を伝える観光はなんといってもイメージが大切。夏のシーズン北海道は花海道に変身する。どこを走っても両側にずらりと並んだマーガレットやポピー、ラベンダーの鮮やかな色が旅人の目を楽しませてくれる。行政が指導し、奨励金などを補助しているにちがいない。
幾春別を過ぎる地点で東京のOT氏から携帯に連絡が入る。東京と、北海道の田舎との距離を感じさせない携帯電話の便利さ、海外ビジネスの件。
しばらく走って桂沢湖に到着。
湖の周囲は63キロあり、原始林に囲まれた自然景観の美しいところで、道立公園に指定されている。この湖は太古のロマンを秘めた化石の宝庫として有名で、アンモナイトやその頃の生物の化石が多数発見されている。
ここではネッシーに似た巨大な怪獣がお出迎え。観光の目玉に建立したに違いないが、そう思った瞬間、目がぎょろりと動いたような気がした。

それにしてもこの日は快晴に恵まれ、富良野までの数十キロの道のりはこの季節にしては珍しいほど清々しいものになった。特に太陽の光を受けて輝く木々の美しさは際立っていた。
紅葉には1ヶ月も遅れてしまった旅人だが、山はひっそりと静まり返り、季節外れのせいか土曜日の割に車も驚くほど少ない。

芦別川は芦別岳に発し三笠の山間部の水も集めて流れ、芦別市で空知川と合流するが、その途中に三段の滝がある。駐車場が完備され、シーズンには農産物の直売や休憩所ができる。わたしたちもここで一休み。
ひょっとしてこの滝は観光案内には出ていないかもしれないが、清冽な流れが三段になっており、音を立てて岩盤を流れ下る。この日は前日の雨のせいか、水量が豊富で三段に落ち込む流れに迫力がある。観瀑台に下りると水しぶきの飛沫がかかり、足元はぬかるみ、日陰の手すりにはすでに霜が降りている。もう冬はすぐそこまで来ているのだ。
三段滝から国道452号線を4kmほど北上すると、新しい道道135号線が合流しており、右折すると22kmほどで富良野市内に行ける。
芦別をショートカットするこの道路は、最近開通したばかり。昔は未舗装のがたがた道で、砂塵を浴びながら走ったことを思い出す。おかげさまでぐーんと富良野が近くなった。

1.プロローグ|2.晩秋の北大|3.時計台・小樽逍遥|4.札幌の夜・ススキノ|5.ヘソを目指して・桂沢湖・三段の滝|6.富良野・美瑛パッチワークの丘|7.美瑛のラーメン・望岳台|8.十勝岳温泉|9.札幌すし善|10.エピローグ中島公園
Copyright ©2003-6 Skipio all rights reserved
