近頃は都会でも蕎麦を打つ人が増えてきた。
一種のブーム的様相にも思える。それだけ男が暇な時間を持つようになったのか、高齢化社会を迎えた若い蕎麦好きの熟年が増えたせいなのか、はたまた健康志向のあらわれか。いずれにしろ「たかが蕎麦、されど蕎麦」ということばを多く聞くようになった。
猪苗代インターで高速道を降り、雪道を走って最初に立ち寄ったのが「会津若松市基幹集落センター」で、ここが地元「湊町産・蕎麦打ち体験」の会場となった。
広々としていて、ふだんは体育館として利用しているようだが、すでにそこには何組かの蕎麦打ちセットが準備され、いまや遅しとわたしたちを待ちかまえていた。
この地域ではすでに「体験村」と銘打って、さまざまな農業体験イベントを実施しているとのこと。
蕎麦を「名物として売っていきたい」という熱意がうかがえた。
「田舎蕎麦伝承会」の代表の方が簡単に説明し、3人ずつのグループに指導員が一人ずつついて蕎麦打ち体験は開始された。
わたしのグループには、知人宅にホームステイしている米国からの留学生アッシーナさんが加わったので、彼女に日本の食文化体験の主役として活躍してもらった。
今回は粗挽きした挽きぐるみの粉(甘皮と呼ばれる種皮まで一緒に挽きこむ挽き方)を使用し、しかもつなぎを使わない「蕎麦粉100%の10割蕎麦(難しい)」を打った。工程において江戸前の打ち方とは少しずつ違っていたのが興味深かった。(参考→すでにアップした蕎麦打ち工程)
その1。
温湯ではなく熱湯を注すこと(湯ごねという)と、注した湯の量が多かった。空気が非常に乾燥していたからだろうか、江戸前は総量の40%を基準とするが、50%を入れた。そのうえ練りの仕上げ段階で今度は水を10%ほど足している(水ごねという)。それに菜箸を使っていたのもユニーク。
その2。
ある程度丸く延ばしてから周囲をぐるりと切り取ってしまった。切り取ったものを丸めて真ん中に置き、蕎麦粉で馴染ませ、もう一度延ばす作業を入れている。これは合理的であると感じたが・・・。
その3。
四つ出しをしない。角を四角くする作業を省略している。
処変われば技術も異なるのは当たり前。
「江戸の蕎麦と会津の蕎麦の違い」は夕刻、後述する星先生のレクチャーの中で説明をいただいた。
「江戸の蕎麦文化は更科文化。一番粉を利用する純白の更科は旨みを感じるデンプンが多い。それは味覚に訴える蕎麦だから商売のための蕎麦になる。あるいは商売のための蕎麦だから旨くなくてはならない。」
これに対し、「会津の蕎麦文化は三番粉文化。要するに田舎蕎麦のことで、こちらは、デンプンは少ないがたんぱく質が多い。ハレの日にお客様にふるまう『もてなしの蕎麦』で、栄養がある。旨みより歯ざわり、歯ごたえ、のど越しという実質的価値が高い。」という指摘であった。
これはわたしが一茶庵で聞いた話だが、「更科はつなぎの力となるたんぱく質が少ないため、100%で打つのは難しい。」つなぎとなる小麦粉で打ちやすくしているようだ。(二八蕎麦など)
会津の蕎麦は保科正之(家光の異母弟)が前封地・信州高遠から持ち込んだという話も興味深かった。無類の蕎麦好きであった正之公は産地の更級の「級」の文字を自身の保科の「科」にしてしまった。「更科蕎麦」の誕生にまつわる本当の話。
ま た薬味となる辛味大根も高遠から持ち込んだ。会津には今でも大根で食する「高遠蕎麦」を標榜する店が多い。
ちょうどお昼を過ぎておなかの虫がグーグーと鳴き始めるころ、今朝のうちに地元のプロのみなさんが打った蕎麦をいただくことになった。
自分で打った蕎麦をなぜ食べないの、という質問は当然ありましょうが、とても食べられる代物ではない・・・・・ではなくて、「これはお土産として持ち帰ってください。」というやさしい配慮がありました。それに蕎麦は打ちたてよりしばらく時間をおいたほうがおいしくいただける。したがってそれぞれが楽しみにしている家族の翌日の夕飯となる運命となった。
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生産者:会津粗挽き田舎蕎麦伝承会 問合せ:会津若松市役所農政課内 TEL:0242−39−1253 ■なお「種蒔きから始める本格的そば打ちコース」と題するプランも用意されている。 ・そば種蒔き体験 H16.8.1(日) ・そば打ち講習会 H16.11.7(日) ・会員特典 そば粉1kg 講習会昼食(新そば)無料 ・会費 7000円 その他「田植えから始める自分だけの吟醸酒作りコース」「苗植から始める新鮮野菜もぎとりコース」「手前味噌作りコース」なども用意されている。問い合わせは上記またはHPへ。 http://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/j/sangyo/nogyo/green-tourism/ 田舎生活を体験するチャンスをお見逃しなく! |
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