獅子だろうか

北陸紀行
「富山の山と海」


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<立山連峰>

左剣岳・右大日岳

金沢から富山を経由する車の中から右手に、雪帽子を冠った立山連峰が青天白日の下に惜しげもなくその白い肌をさらし、その光景はまさに圧巻といえるものであった。

一段高い高速道路の上からの眺望ゆえに、富山県側の山嶺ばかりか長野との県境・白馬の高嶺(白馬岳・旭岳・杓子岳)まで遠望できる。

立山連峰は主峰・剣岳(2998m)を真ん中に、前剣(2813m)・剣御前(2777m)・奥大日岳(2611m)が南に伸び、その奥は国内屈指の山岳観光のメッカ「立山黒部アルペンルート」につながっていく。

右が立山連峰の主峰・剣岳

北には池平山(2555m)・白ハゲ(2388m)・赤谷山・猫又山(2378m)・釜谷山・毛勝山(2414m)と長い山脈を形成し、名湯・宇奈月の山並みに沿ってなだらかにくだり、黒部川とともに日本海に落ち込む。

このパノラマ景観は、北陸自動車道が富山県を縦断するあいだ常に右手に寄り添い、冬の残り香と透明感を与えてくれた。

<ますの寿し>

ついでに食のこと。

富山名産ますの寿し富山といえば「ますの寿し」。

学生時代、富山出身のクラスメイトは休暇のたびにこの美味なる「おし鮨」を土産に持ち帰り、貧弱な食生活に彩を添えてくれた。

同時に広島の友人は「酔心」を、秋田の友人は「太平山」を、ともに地元の銘酒を引きさげて帰京し、(心理的に)たいへん豊かな酒盛りをしたことを思い出す。

一升瓶を抱え、手拍子も力強く卑猥なる「数え歌」を高歌放吟し、周辺に迷惑をかけたことはまちがいない。時代は移ったが、当時のご近所のみなさん、どうぞご勘弁を・・・。


<富山湾と魚>

もう一つ豊饒の海・富山湾の魚のことにふれてみたい。

前述のように富山の地形は立山連峰の急峻から、富山平野をステップにして富山湾に急激に落ち込んでいる。黒部川・庄川・常願寺川・小矢部川など多くの清流が、豊かな山と森が育てた栄養分を日本海・富山湾に運び込む。
この富山湾は、地図上で見ても理解できないが、意外に深い。1000mを越える深い海は清浄で滋養に満ちた深層水(日本海固有水と呼ぶ)を豊富に蓄え、それゆえに多種の豊かな魚が育つ。富山湾の容積の約60%は300m以深の日本海固有水で占められているという。

おらが海

その豊かな海で成育した魚は種類も多く、おいしくいただける。
脂の乗った「ブリ」はその代表で、日本三大ブリの漁獲地として有名だ。北陸の正月の食卓には欠かせない。

「ホタルイカ」も、おそらく富山湾固有の食材で、滑川漁港にて多く漁獲される。最近は美味な「沖漬け」を口に入れる機会が増えている。このあいだ縁があって、都内某所で生きたままの「ホタルイカのおどり」を食した。旬の味を堪能した。

「甘エビ」(ホッコクアカエビ)は最近でこそスーパーに並ぶようになったが、都心で手に入るものはほとんど外国産で、冷凍臭さの残る甘エビを食すると甘エビそのものを誤解してしまう。「富山産甘エビ」は、地元や著名店でしかそのうまさを味わうことができないかもしれないが、芳醇な味わいがある。
同じエビでも透明で淡いピンク色した大きさ6〜7cmの「白エビ」は、漁業として漁獲しているのは富山湾のみ。これは希少価値で、東京でも置いている店は少ない。

タイやヒラメの白身魚、鮭・スケトウダラ・サクラマスの寒流魚やベニズワイガニ・アオリイカ・スルメイカ・バイ貝も富山湾ならではの味わいだ。

かように、この海には酒の肴となる海の幸がいっぱい回遊している。
これを見過ごす手はない。東京から遠隔地にあり、そうは頻繁に訪問できないが、こんどはゆっくり食の旅を計画したいと思う。

<魚津の蜃気楼>

忘れないうちに書き留めておきたい。
魚津で全国的に有名な蜃気楼を見てしまった。
(本当に蜃気楼?)と、一瞬自分の目を疑ったが、海の中に陸地が見えるのだ。(これはまちがいない)と確信した。

帰ってから調べてみたが、季節的に3月から6月までの暖かな日に現れる確率が一番多いようで、この日はその条件にぴたりとはまっていた。
写真で記録できなかったのが残念だが、本当に本当の話。

<完>

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