<那珂インターから大子町・袋田の滝へ>

かつて「奥久慈観光」という言葉を、耳にしたことはあったのですが、
「袋田の滝」ということばは最近聞くようになりました。この滝が日本3名瀑という評判を聞き、今回の旅程に入れてみました。そういえば冬の観光を宣伝する観光会社のパンフは「氷瀑」という耳なれない言葉で「袋田」へ顧客を誘っていました。
地図でみる限り旅程に無理なく組み込めそうです。
<大子町へ>
3月12日9時出発の計画が遅れ、10時15分とゆっくり家を出発したために首都高速の4重衝突事故に巻き込まれ、新宿まで2時間という大きなロスをしてしまいました。こんなことは過去の記憶にもありません。
守屋のサービスエリアに到着したのが13時14分、那珂インターを出たのが既に14時22分です。
袋田の滝がある大子町(ダイゴマチと読む)までここから国道118号線で40キロ。天気も晴から曇りがちになってきました。暗くなって到着してもせっかくの名瀑が興ざめになってしまいます。ハンドルを握る手が若干汗ばみます。でも「ゆっくり行こう。夕飯までに間に合えばいいや」と思いなおせば気は楽になりました。
<久慈川>
この辺りはゴルフ場銀座のようで、左右に20を越すゴルフ場が競って看板を並べています。オープンしたのはきっとバブル以前のことでしょう。そういえば飛行機の上から何度かこの辺りを眺めたことがあります。樹木は伐採され、山は削り取られ、そのことが上空から手に取るようにわかり、複雑な心境になったことを思い出します。
愛車は、久慈川の清流を右に左に見ながらゆるく街道を登り、徐々にのどかな山間部に入って行きます。「あゆ」の文字が目に入り、6月の鮎解禁の季節には、太公望が肩を並べて川にはいる光景が目に浮かびます。
道路標識に沿ってくねくねと曲がりながら、3時15分やっと目当ての滝に到着。
駐車場から足早に歩いて5分、石の階段を上がってトンネルの入口から観瀑台に向かう。お一人様料金100円也。
<袋田の滝>

この滝は、今まで見たことの無い不思議な景観でわれわれを迎えてくれました。横幅が73メートルと広いのですが、その最大の特徴は、高さ120メートルを4段に落下する迫力にあります。日本に数ある滝の中でも非常に珍しい滝の一つでしょう。
私の滝に対する評価は雄大さと激しさ。でなければ思い切り繊細な滝。これに大きくかかわりがあるのが水量です。単純に言えば大雨の後、滝は水量を増し激しく落ちます。先だって立寄った吹割の滝(群馬)は、前日の雨で豪快に流れ落ちていたため、評価を改めました。華厳の滝もすさまじい流量が轟音を立てて落下しています。
袋田の滝はこのところの晴天のせいか、今回は残念ながら水量が少なかったのですが、雨後の激しさを想像するとかなりのものだという印象を受けました。

それでも下方を覗いてみると、落水は激しく深緑の滝壷をたたき、はげしく揺れています。恐ろしい地獄の光景を連想し、思わず身震いがしてしまいました。
<西行法師>
平安末期の旅人・西行法師(1118−1190年)は「この瀧は四季に一度ずつ来て見なければ真の風趣は味わえない」という言葉を残しています。
春は若葉にゆらめく滝、夏は飛沫が清涼感を演出し、秋は太陽に輝く紅葉の鮮やかさ、冬は氷結の静寂さと、確かに四季折々の風情を織り成してくれることでしょう。
帰り道は吊橋を渡ります。ゆらゆら揺れる気持ちの悪い橋を渡った後、細い山道から振りかえると滝の流れは幾筋もの白い糸のように見えました。吊橋と滝、古い茶店からの眺望はなかなかのものです。
ここから1時間弱で月居山へのハイキングができます。「生瀬滝」がり、頂上からの奥久慈の眺望は格別のようですが、今度来た時の楽しみに残しておきましょう。

川沿いの土産物屋を覗きながら、うしろを振りかえりつつ帰路につきました。この日はシーズンオフのウイークディで、観光客も少なくしっとりと落ち着いていました。
次回は秋の滝を鑑賞してみたい。10月下旬から11月上旬が見頃のようです。
花もみち 経緯にして 山姫の
錦織出す 袋田の瀧 西行法師
<続く>
<平潟と鮟鱇鍋>
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