< 北の国から >


富良野より十勝岳連峰2001.11.10 フジテレビ制作の「北の国から」は、娯楽一辺倒に偏りがちなこのテレビ局が珍しくまじめに取り組んだ良心的な番組である。そして、富良野を全国区の人気ある街に押し上げた。

 冬は特別厳しい寒さに襲われる盆地の町である。歴史を紐解けば、内地から開拓に入った人たちの中から、その厳しい環境と貧しさに耐えかねて離農離散する一家がたくさん出た。明治以降の悲惨な出来事は数えるに暇がない。


< 黒板五郎 >

 「北の国から」で田中邦衛扮する主人公の「黒板五郎」も苦労人の一人。赤貧の苦労の中で鍛えた富良野魂は暖かい。ドラマの中の子供たち、「純」も「蛍」もその人間性のぬくもりの中で育った。

 第23回「破れた靴」に象徴的なシーンがある。
 純たちの母親・令子の葬儀の終わったあと、遅れてきた五郎の悪口を言う一同に清吉が抗弁する。「それはちがうんじゃないですか。五郎は早く来たかったンですよ。あいつがどうにも来れなかったのは、恥ずかしい話だが、金なンですよ。金がどうにもなかったンですよ。 ・・・だからあのバカ、汽車で来たンでしょ。一昼夜かかって汽車で来たンですよ。飛行機と汽車の値段のちがい、わかりますかあなた。一万ちょっとでしょう。でもね、わしらその一万ちょっと、稼ぐ苦しさ考えちゃうですよ。何日、土にはいつくばるか。・・・」


< 麓郷の森 >

いつも暖かい
 雨上がりの麓郷の森はぬかるんでいた。森の奥に五郎が建てた哀れな丸太小屋があった。


板敷きの間、隙間風の入る安普請の家、現代生活とはかけ離れているが・・・・・。
「灯は小さくても いつもあったかい」と倉本聡さんのことばが玄関にかかっていた。



< 石の家 >

 五郎の風車の家 95.10.8麓郷の森から少し離れたところに「五郎の石の家」はあった。赤い屋根の石の家は背後を小高い森に守られ、草原の奥にポツンと静かに立っていた。とんがった風呂の煙突がニョキッと天を向き、その横で風車が微風に回っている。この風呂も五郎が自分で作った。風車も自分で立てた。すべて手作りである。物語の最初から最後まで五郎は自分でモノを造る人であった。

 富良野ジャム園の脇を抜けて緩やかな坂を上ってしばらく進むと小高い丘に出る。ここが標高500mの「麓郷展望台」で、いっきょに視界が開ける。ラベンダーは花を落としているが多彩な色彩のポピーは我慢強く風に揺れていた。

 すがすがしい秋があった。

<ラベンダーとファーム富田>

ラベンダの華やかな町 富良野を楽しませるもう一つの話題は初夏を彩る花々。
 中でも紫色に丘を染めるラベンダーは必見の価値がある。

 ラベンダーを町の代名詞にまで育て上げたのは中富良野町の「ファーム富田」。毎年
90万人もの花人(はなびと)が、7月から8月のラベンダーシーズンにここを訪れる。


< 娘と >

 わたしが始めてラベンダーの紫を見たのは最盛期の95723日、北海道旅行に来札した学生時代の娘を伴っての富良野行きであった。まず、一面に咲きそろった紫色の絨毯の鮮やかさと優雅さに、新鮮で爽快な衝撃を受けた。そして香りに魅了された。周囲の森から続く斜面を利用した「彩りの畑」には、赤・黄・緑・紫・白・ピンクと色とりどりのポピーやサルビアが帯状の縞模様を描き、高台から見下ろす緑の丘ははるか彼方まで続き、その向こうには十勝岳連峰が聳え立っていた。

ラベンダーの盛り


< ラベンダー >

ファーム富田ポピー園 
 ラベンダーの盛りは短い。その年の天候具合によって開花時期は微妙にずれる。「ファーム富田」の旬はほんの3−4週間ではないだろうか?8月の中旬にはきれいに刈り取られてしまい、紫色の絨毯にお目にかかることができない。そして9月、寒い秋風が吹き始めるとトラクターが畑に入り、来年の準備に取り掛かる。

 ただ、富良野のラベンダーは「ファーム富田」だけではない。鮮やかなポピー芦別からはいる町の入口「ラベンダーの森」には富良野一のラベンダー畑があり、また「ラベンダー羊ケ丘」は十勝岳連峰・麓の高みにあるため8月一杯まで楽しめる。そのほかにも「町営ラベンダー園」「フラワーランドかみふらの」「ポプリの里」「日の出ラベンダー園」などが点在し、どこに寄ったらいいのか迷うほどである。

 富良野の花の大地には華やかさと若さと元気がある。若い女性たちが、「彩の畑」や「倖の畑」を散策し、「ポプリの舎(やかた)」でラベンダーソフトをほおばる。「香水の舎(いえ)」では特別に調香された花の香水を襟元に一振りし、美しい北の大地の絵葉書やラベンダーポプリを吟味する。女性誌のグラビアを飾るにふさわしい光景がある。

< 富良野と温泉 >

 富良野は「フラノ」と総称するが、具体的には北から上富良野町、中富良野町、富良野市、南富良野町という4つの行政区に分かれている。もう一つの観光の町・美瑛町はそのさらに北に位置し、今では観光客のほとんどが、隣接する富良野・美瑛をセットで訪問する。

 町の東方に大雪山系十勝岳、西方に夕張山系芦別岳がそびえ、南方には千古の謎を秘めた天然林の大樹海があり、その中央部を十勝岳に源を発する空知川が、富良野川などその支流を集め南から貫流している。寒さを除けば恵まれた盆地である。

 開闢以来
農業の中心であった酪農が、乳価の値下がりで不振を極めたが、それにかわってバレイショ、スイートコーン、たまねぎ、メロンなどの穀物、野菜、果物の減農薬農産物の栽培が盛んになっている。収穫期の国道38号線沿いは「直売所」の看板が並び、観光客で渋滞をきたすほど。我慢の農業が日の目を見つつあるようです。


<秀逸 十勝岳温泉の眺望>

十勝岳温泉からの紅葉と冠雪 95.10.2

 上富良野・日の出公園を東進すること15km、山道を登り続けると十勝岳温泉に出る。
その「湯元凌運閣」の露天風呂から眺める十勝岳連峰の光景はすばらしい。紅葉のころはなおさら美しい。

 また「北の国から−’95秘密編」で、シュウ役の宮沢りえが入浴した吹上温泉の露天は、ここから5kmの距離。道端の駐車場に車を止めて山の斜面を下ればすぐに川沿いの温泉が見えてくる。混浴であるが、りえさんの入浴は確か冬の夜であった。

富良野を描く

(続く)

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24章 富良野

富良野ラベンダー
富良野ラベンダー