17章 テイネ〜積丹半島


<テイネでスキーのあと小樽で食事>

 2月のある朝、雲一つない晴天に恵まれ「こういう日は絶好のスキー日和、これも日頃の行いが良いからね。」と戯れごとをいいながらテイネ・オリンピアに到着。時刻は朝の9時過ぎ。女房殿は早くも数回目のスキーで、やっとボーゲンを卒業。雪を恐がらなくなったのは成長した証拠で、スキーはここから楽しくなってくる。

 気温は零下なのだが、晴天のせいで汗ばむ。もう少し滑りたい気持ちを残し、山頂に雪が舞い始めてきたのをきっかけにブーツを脱いだ。11時半。

広いゲレンデを独占


<札幌オリンピック>

 テイネ山には「オリンピア」と「ハイランド」の二つのゲレンデがある。ずいぶん昔になってしまったが、1972年2月札幌オリンピックのアルペン競技は「ハイランド」を主に行われた。両方とも北海道の他のスキー場に比べ距離は短いが(本州一般に比べたら充分長い)、コースの変化に富みパウダースノーを楽しむことができる。特に2月は天候も安定し、雪質も最高で、間違いなく本州のスキー場より上手に滑ることができる。出張族の感動の言葉を何回も耳にした。「ほんとうにすばらしい!」と・・・。

 交通も至便で、家から車で30分ほどの距離なのでほんとうにお世話になりました。朝、その日の天候を確認、晴れていたらそそくさとスキーウエアを着込み、板と靴を車に乗せ出発。着いたら車の中でブーツを履き替えそのままゲレンデへ。まったく便利。

 リフトも空いているから午前中3時間も滑ればそれだけで十分満足感を味わえる。

 東京からのスキー好きの金曜出張族を何人もこのゲレンデに案内した。土曜日の午前中を滑って札幌駅まで送れば、東京で家族と週末の団欒の食卓を囲むことができる。奥様にはうらやましがられる土産話と、子供たちにはホワイトチョコレートが手渡され、家族は円満に・・・。

<小樽フィッシャーマンズハーバー>

 さて、この日はまだ早い時間だったので小樽に足を向けた。

 冬の小樽には縁が少ない。昨年は大雪が小樽を襲い交通マヒという情報が先行して、考えてみたら一度も冬の小樽を訪問していなかった。

冬の小樽港 寒々と

 「小樽港が見えるフィッシャーマンズハーバーで食事をしましょう。ウニ茶碗蒸しとカキと蛸のお刺身を食したい。」と女房殿は食べ物への欲求に際限がない。夏にきた時には、女5人で一人5千円分も食べてしまったそうである。
 その上、倉庫街にある小樽地ビールを飲んで、さらに鮨屋通りの店「しかま」の鮨も食べて、おなかをいっぱいにして札幌に帰ってきた。恐ろしきはオバタリアンパワーである。恐いもの知らずの群れがパワーに任せて北海道をのし歩いている感がある。
 話はそれたが、この館と食べ物は値打ちがある。人に教えたくない店である。

 
北一ガラスに立ち寄り、冷酒用のグラス徳利と猪口を購入。


<積丹半島に冬のドライブ>

 好天に任せ、積丹半島を神威岬までドライブしてみようということになった。

 石狩湾に沿って往復100`ほどの雪道の旅だ。湾といってもほとんど冬の日本海そのもので、風は強く波は荒い。時化ていれば高波は道路まで覆いかねない。
 小樽からオタモイ、塩谷などの海岸を走る羊蹄国道(5号線)を経由して、ニッカウヰスキーで有名な余市町に入る。ここを右折するといよいよ積丹半島だ。

冬の積丹半島

 海岸をはうように走るこの国道229号沿いには、自然が作り出した大小の奇岩や断崖など見所がいっぱい。
また、伝説に彩られロマンの香りが漂い、観光シーズンなら十二分に楽しめるドライブコースである。しかしこの季節、
右手の日本海はいかにも冬らしく寒々としていて、穏やかな日和であるのに波は高く、その飛まつが海岸道路に舞う。古平町に入ると山が迫って、道幅は狭く、ハンドルを持つ手に力が入る。海に立つ奇岩が目に入る。「まっすぐ運転して!」と助手席の女房殿の叱咤が厳しい。


<豊浜トンネルと崩落事故>

 まもなく新・豊浜トンネルを通過する。
 ここ豊浜トンネルでは1年前にたいへんな崩落事故が起き、20人が岩の下に閉じこめられた。事前に予測できたこの事故は人災だとマスコミは書き立て、世間は騒然とした。当時の堀知事は「事故と災害は別。事故なら道主導で対策を進めるが今回は災害ですから」と釈明して、道民の怒りと顰蹙をかった。
悲劇から1年たったいまも、道や開発局の危機管理のありように道民の不安は残る。道内道路の大部分は観光立国らしく立派に整備されてきたものの、いまだ海岸道路には危険がいっぱい。道・経済は決して豊かとはいえず、万全の危機管理を期待するのは無理。同様の事故が起こらないことを祈るのみ。

 新しく広いトンネルが開通したものの、豊浜トンネルを走っている時はお尻がむずむずし、自然に右足のアクセルに力が入ってしまった。


<美国のすし>

 やがて積丹町・美国に。ビクニと読む。
 この海岸線は、その名のとおり奇岩美にあふれる。海は透明度が高く、ニセコ積丹国定公園の主要な位置を占めるばかりか、沿岸の3ヶ所は海中の動植物が豊富として、国から海中公園の指定を受けている。夏ならば、ダイビングや海底探勝船で海中の美しさを楽しめる。ソーラン節に次の一節がある。

「♪夢の積丹、美国の浜は、主に見せたいものばかり」

 またここはおいしい魚の宝庫でもある。
 5月のウニ漁、7月のイカ漁、秋のサケ漁、冬のタラ漁と四季折々の漁場である。それぞれの料理をイメージすると口腔に唾液があふれるのだが、なんといってもウニが絶品。


 美国においしい鮨屋がある。既に小樽に支店が出ているために、ありがたさは半減してしまったが、ここが本家であり、グルメとしては寄らないわけにはいかない。
 その「ふじ鮨」は地物鮮魚のみを提供する鮨屋である。小樽でイタリア系魚料理を食した健啖なる胃の中に、積丹半島の鮮度高い魚貝を詰め込んだ。

 美国を過ぎると、国道は曲がりくねった山道へとはいる。登り切ると積丹では珍しい農牧地がしばらく続く。野塚までの7kmの道沿いに海は見えない。左手に雪の帽子をかぶった積丹岳が眺望できる。

 さらに走って、岬の入り口までやっとたどり着いたのだが、そこで愕然としてしまった。なんと「冬場立ち入り禁止」となっているではないか!!
 まったく残念であったが、日も沈みかけ、そろそろ帰路に着く時刻。進路を南にとり、寂しさから逃げるように一目散に札幌を目指して走った。

 帰り道、朝里川温泉「宏楽園」にて湯浴み、心地よい湯気の中で一日の疲れを癒した。極楽三昧の一日であった。

<続く>

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