96年6月21日リラ冷えの季節に

「・・・菜種梅雨とか菜の花梅雨など、梅雨にもいろいろと名称があるが、北海道にも短い期間だが蝦夷梅雨というのがあって鬱陶しい。北海道に梅雨はないと聞いていたが、最近はご多分に漏れず気象状況が変化しているのか、あるいは知らないだけで昔からあったのかもしれない。ほとんど太陽が顔を出さず、したがってこの期間はまた春先に逆戻りしている按配で、東京では初夏なのにこちらでは寒さすら感じる。

今がちょうどその蝦夷梅雨の時期だが、緑はやっと木々に色づいてさわやかではある。

東京と違って夏がすごく短いので、北国の人々はこの夏をたいへん大切にする。待ち望んでいた夏がやっとの思いでやってくるわけだから笑顔で迎えてあげるのが礼儀。
 同時に、ジャンボ旅客機に乗って、たくさんの観光客が北の台地に雪崩れこんでくる。春山の雪崩はご免こうむりたいが観光客の大挙来道によって、北海道全体が活発になる。ようやく暗くて寒い季節にさよならできる。長い冬に耐えて明るい太陽を迎えられる。
 短い夏の間、大通公園周辺ではさまざまなイベントが計画され、道民はこぞってそれを楽しむ。6月は花が咲き乱れ、7月は栄養たっぷりのアイスクリーム、8月になれば公園はとうもろこしの香ばしい焼き香に包まれる。

 そう、いい忘れたことがある。先週開催された「よさこいソーラン祭」では、冬の鬱屈から開放されて、凄まじいばかりに若さが爆発していました。あのエネルギーはうらやましかった・・・リラ冷えの季節に」


96年10月25日通勤と大通公園

「・・・毎朝、出勤の車は大通公園を通ることにしている。

理由のひとつは木々の様子や花々の咲き方から、自然の変化を感じ取れるからで、ちょうど今週はじめあたりから紅葉が色づいてきた。と思いながら、週末の今朝通ってみると寒々としていて落ち葉がいっぱいたまっている。もう秋も終わりかと感慨深いものがある。
 北国の冬は早い。どの家も冬を迎える支度に余念が無い。ストーブを出して掃除し、燃料を備蓄し寒い冬に備える。いつ雪が来てもいいように家の周りを点検し、暖かな衣料を準備し、冬将軍の到来を待つ。

もうひとつの理由は札幌の最新のファッションを知ることができるから。大通公園といえば、東京の銀座や渋谷のようなところだから、特に女性のファッショントレンドを探ることができる。今年はブーツが多いとか、流行色とか、コートの種類とか、そういった興味や関心が時として身を助けることがあるからだが、あまり見とれすぎて事故を起こさないように気をつけないといけない。
 このところやっとコートを身に着けた人を見られるようになった。これも冬支度のひとつ。

東京のTVは紅葉情報の花盛り。北海道も南の方は紅葉がまだ見られる。この週末が最後かも知れないから、どこか訪ねてみようと思っている。」


96年11月29日寒波と雪

「・・・夕刻、大通公園を通りかかったところ、何時の間にか白いイルミネーションが輝いていた。冬が来たのだという思いと、間もなくやってくるクリスマスの華やかなイメージがダブる。

帯広から夕方到着すると札幌市内は雪景色であった。
 昨夜札幌を発つときから降り始めた小雪が今日も一日降り止まず、乾いたさらさらの雪が大通公園をうっすらと覆っていた。東京で体験するベタ雪とはまったくちがって、真冬日の気温の低さを実感する。真冬日とは一日の最高気温が摂氏零度を越えない日のことをいう気象用語で、札幌の冬はすっぽりとこの真冬日の洗礼を受ける。

ススキノの繁華街の路面は踏み固められた氷でテカテカに光っていて、前に進むのにすら骨が折れる。酔っ払って転んで骨折、という最悪の恥をさらさないように注意すべし。

2度目の冬である。去年の冬は体の芯まで冷え切ってしまい、たまに出張で来るのと腰を落ち着けて生活するのとはまったく違うことを実感した。一人暮らしのマンションの部屋は帰宅すると4℃しかなかったし、まだマイナスにならないだけマシと考え、身体をアルコールの力で暖めた。吹雪の週末はじっとしているしか方法が見つからなかった。しかし昨年とは心構えが違う。余裕はある。寒さへの恐怖も薄らいだ。

この冬は仕事と温泉と、ついでにスキーにも精を出そうと思っている。」

<続く>


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39章 大通公園
家族への手紙より