クマガイソウ
32 クマガイソウ(熊谷草) ラン科アツモリソウ属
 高さ20〜40cmの多年草。北海道南部から九州の林の下や竹林、杉の植林地に生える。茎の先に扇形の葉が2枚相対してつく。和名は袋状の大きな唇弁(下写真)を熊谷直実の背負う母袋(ほろ=合戦の時に背後からの矢を防ぐ為に羽織った)にたとえ、別種の敦盛草(アツモリソウ)に対比させた。平家物語では、清盛の弟・経盛の三男敦盛は一の谷で直実に討たれた。笛の名手で紅顔の美少年はそのとき17歳。花の名に、そんな故事を引き合いに出す高尚さは、さすが日本文化。
 しかしながら自生にお目にかかれることはほとんどない。クマガイソウは絶滅危惧U類。アツモリソウについては盗掘され続け、野生蘭を代表する絶滅危惧種となり、北日本においてのみ一部に自生するのみ。敦盛の無念はここにもある。

花期:4−5月
花言葉:
5月福島県塔のへつり 森や林

クマガイソウ

京王百草園にて

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熊谷草 母袋一つづつ 群落す   清崎敏郎
下草の 熊谷草に 雫ある      榎本好宏